子どものいない夫婦に公正証書遺言をおすすめする5つの理由

「遺言書を作るなら、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがよいのだろう?」
「公正証書遺言は費用がかかるけれど、どんなメリットがあるの?」
「夫や妻にできるだけ負担をかけずに財産を残したい」
このように考えている方に知っていただきたいのが、 公正証書遺言のメリットです。
子どものいないご夫婦の場合、 「自分が亡くなったら、財産はすべて配偶者が相続する」 と思っている方も少なくありません。
しかし、子どもがいない場合、 配偶者だけが相続人になるとは限りません。
亡くなった方の親がご存命であれば配偶者と親、 親や祖父母がすでに亡くなっていれば、 配偶者と兄弟姉妹が相続人になることがあります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、 甥や姪が相続人になることもあります。
「自宅や預貯金を配偶者に残したい」 「残された配偶者に親族との話し合いをさせたくない」 と考える場合には、遺言書を作っておくことが大切です。
遺言書にはいくつか種類がありますが、 確実性を重視したい場合に検討したいのが 公正証書遺言です。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、 遺言をする本人の希望をもとに、 公証人が法律に沿った形で作成する遺言書です。
公証人が遺言者本人の意思を確認し、 原則として証人2名の立会いのもとで作成します。
自分だけで作成する自筆証書遺言と比べて、 費用や準備は必要になりますが、 形式面の確実性や相続開始後の手続きの進めやすさ に大きなメリットがあります。
公正証書遺言の5つのメリット
公正証書遺言には、主に次の5つのメリットがあります。
- 形式不備による無効のリスクを抑えられる
- 紛失や改ざんの心配が少ない
- 家庭裁判所の検認が不要で、相続手続きを進めやすい
- 遺言書の全文を手書きする必要がない
- 公証役場へ行くことが難しくても作成できる
1.形式不備による無効のリスクを抑えられる
遺言書は、 自分の希望を書いておけば何でも有効になるわけではありません。
民法で決められた方式に従って作成する必要があり、 方式に不備があると、 遺言書が無効になってしまう可能性があります。
自筆証書遺言の場合は、 原則として本文を本人が手書きし、 日付や氏名なども決められた方法で記載することが必要です。
また、形式として有効であっても、 財産の書き方や相続させる人の指定があいまいだと、 実際の相続手続きで問題になることがあります。
公正証書遺言では、 法律の専門家である公証人が遺言者の希望を確認し、 法律に沿った形で遺言書を作成します。
「せっかく遺言書を残したのに、 形式の不備で使えなかった」というリスクを 大きく減らせることが、公正証書遺言のメリットです。
ただし、公証人がすべての財産や家族事情を 自動的に調査してくれるわけではありません。
誰が相続人になるのか、 どのような財産があるのか、 誰に何を残したいのかについては、 事前に整理しておくことが大切です。
2.紛失や改ざんの心配が少ない
自宅で遺言書を保管していると、 亡くなった後に遺言書が見つからないことがあります。
また、誤って処分されたり、 破損したりする可能性にも注意が必要です。
公正証書遺言は、 原本が公証役場で保管されます。
そのため、 手元にある書面を紛失したとしても、 遺言書そのものが失われる心配を抑えることができます。
遺言書を破棄されたり、 隠されたり、 内容を書き換えられたりする心配もありません。
「作った遺言書を確実に残しておきたい」 という方にとって、 公証役場で原本が保管されることは大きな安心材料です。
なお、自筆証書遺言についても、 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、 紛失や改ざんのリスクを軽減できます。
3.家庭裁判所の検認が不要で、相続手続きを進めやすい
自宅などで保管されていた自筆証書遺言を発見した場合には、 家庭裁判所で 「検認」という手続きをする必要があります。
公正証書遺言には、 この検認手続きが必要ありません。
そのため、 相続が始まった後に、 遺言書を使った預貯金や不動産などの手続きへ 比較的スムーズに進みやすいというメリットがあります。
特に、残される配偶者が高齢の場合には、 相続開始後の手続きをできるだけ少なくしておくことも 大切な備えになります。
法務局に預けた自筆証書遺言も検認は不要
ここで注意したいのが、 法務局の自筆証書遺言書保管制度との違いです。
法務局に保管されている自筆証書遺言についても、 家庭裁判所の検認は必要ありません。
ただし、 相続人や遺言執行者などが実際の相続手続きに利用するためには、 法務局から 「遺言書情報証明書」 の交付を受ける必要があります。
この証明書を請求する際には、 相続関係を確認するための戸籍などを 用意する必要があります。
通常は、 遺言者の出生から死亡までの戸籍、 相続人全員の戸籍、 相続人全員の住民票が必要です。 法定相続情報一覧図も利用できます。
子どものいない方は、戸籍の収集が多くなることもあります。
たとえば、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースでは、 相続関係を確認するために、 親や兄弟姉妹に関する戸籍まで必要となり、 集める戸籍が多くなることがあります。
つまり、 「法務局に預けた自筆証書遺言は検認が不要」 という点では公正証書遺言と同じですが、 相続開始後、すぐに何の準備もなく使えるわけではありません。
一方、公正証書遺言では、 法務局から遺言書情報証明書を取得するような手続きは必要ありません。
相続手続きそのものに戸籍などが必要になる場合はありますが、 遺言書を使い始めるまでの手続きが一つ少ないことは、 公正証書遺言のメリットといえます。
4.遺言書の全文を手書きする必要がない
自筆証書遺言は、 財産目録を除き、 本人が全文を手書きして作成します。
内容が長くなるほど、 書くこと自体が大きな負担になるでしょう。
また、書き間違えた場合の訂正にも 法律上決められた方法があります。
公正証書遺言では、 遺言者が希望する内容を公証人が確認し、 公正証書として作成します。
そのため、 遺言書の全文を自分で手書きする必要はありません。
長い文章を書くことが負担な方や、 手が震えるなどの理由で手書きが難しい方でも、 公正証書遺言であれば作成できます。
年齢を重ねると、 「遺言書を作ろうと思っていたけれど、 長い文章を書くのが大変になった」 ということもあります。
手書きの負担が少ないことは、 公正証書遺言の大きなメリットです。
5.公証役場へ行くことが難しくても作成できる
公正証書遺言は、 必ずしも本人が公証役場まで出向かなければ 作成できないわけではありません。
高齢や病気などの理由で外出することが難しい場合には、 公証人に自宅や病院、 介護施設などへ出張してもらい、 遺言公正証書を作成できます。
ただし、 公証人に出張してもらう場合には、 公証人手数料が1.5倍になることに加えて、 日当や交通費などが必要になります。
遺言書を作成するには、 本人が遺言の内容を理解し、 自分の意思として遺言をすることが必要です。
「まだ元気だから遺言書は先でいい」 と考える方もいらっしゃいますが、 遺言書は元気なうちの方が、 自分の希望をゆっくり整理して作成できます。
公正証書遺言にも注意点があります
公正証書遺言には多くのメリットがありますが、 自筆証書遺言よりも費用や準備が必要です。
- 財産額などに応じた公証人手数料がかかる
- 原則として証人2名が必要
- 戸籍や財産資料などを準備する必要がある
- 公証人との事前の打ち合わせが必要
「公正証書遺言なら、公証役場へ行けばその場ですぐ作ってもらえる」 というものではありません。
誰が相続人になるのか、 どのような財産があるのか、 誰にどの財産を残したいのかなどを整理し、 必要な資料をそろえながら内容を決めていきます。
子どものいないご夫婦に公正証書遺言をおすすめする理由
子どものいないご夫婦の場合、 遺言書がないことで、 残された配偶者の負担が大きくなるケースがあります。
たとえば、 夫が亡くなり、 妻と夫の兄弟姉妹が相続人になった場合、 遺言書がなければ、 相続人全員で遺産分割について話し合う必要があります。
長年夫婦で暮らしてきた自宅であっても、 「妻だから自動的にすべて相続できる」 とは限りません。
特に次のようなご夫婦は、 遺言書について早めに考えておくことをおすすめします。
- 子どもがいない
- 自宅不動産が主な財産になっている
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる可能性がある
- 配偶者にできるだけ多くの財産を残したい
- 残された配偶者に親族との話し合いをさせたくない
- 相続開始後の手続きをできるだけ分かりやすくしておきたい
夫婦で遺言書を作成する場合には、 夫婦それぞれが自分自身の遺言書を作成します。
「夫が先に亡くなった場合」 「妻が先に亡くなった場合」 の両方を考えながら、 それぞれの遺言内容を整理することが大切です。
自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがよい?
公正証書遺言が、 すべての方にとって唯一の選択肢というわけではありません。
財産関係がシンプルで、 費用をできるだけ抑えたい場合には、 自筆証書遺言を作成し、 法務局の保管制度を利用する方法もあります。
一方で、 残された配偶者の相続手続きをできるだけ分かりやすくしたい場合や、 遺言書の形式や保管に不安を残したくない場合には、 公正証書遺言を検討するメリットがあります。
大切なのは、 「どちらの遺言書が優れているか」ではなく、 ご自身の家族関係や財産、 遺言を残す目的に合った方法を選ぶことです。
まとめ|公正証書遺言は残される配偶者の負担を減らす備え
公正証書遺言の主なメリットは、次の5つです。
- 形式不備による無効のリスクを抑えられる
- 紛失や改ざんの心配が少ない
- 家庭裁判所の検認が不要で、相続手続きを進めやすい
- 遺言書の全文を手書きする必要がない
- 公証役場へ行くことが難しくても作成できる
公正証書遺言を作ることは、 単に財産の分け方を決めることだけではありません。
「住み慣れた自宅で安心して暮らしてほしい」
「親族との話し合いや手続きで苦労させたくない」
「自分が亡くなった後の手続きを、 できるだけ分かりやすくしておきたい」
このような思いを、 遺言書という形で残しておくことができます。
特に子どものいないご夫婦の場合は、 まず「今のままでは誰が相続人になるのか」を確認し、 そのうえで財産を誰にどのように残したいのかを 考えてみることをおすすめします。
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ご夫婦が元気なうちに、 これからの財産の残し方について一緒に整理してみませんか。
