おひとりさまの終活:不安との向き合い方

1. おひとりさまの増加と終活への関心
「おひとりさま」という言葉が一般的になって久しいですね。
近年、配偶者に先立たれた方や、子どもがいない、あるいは子どもがいても物理的・心理的に頼ることが難しいという方が増えています。
そのため、「将来のことは自分で準備しておかなければ」と感じる方が多くなっています。
不安を解消するために必要なのが「終活」です。
終活とは、人生の最終段階に向けて自分のことを整理し、残される人への配慮を行う活動のこと。
かつては「遺言」や「お墓」の準備など、ごく限られたことを指すイメージがありましたが、今ではもっと幅広い意味を持つようになりました。
しかし、「何をすればいいのか分からない」「誰に相談すればいいのか不安」という声もよく耳にします。
特におひとりさまの場合、その不安は人一倍大きいでしょう。
2. おひとりさまの抱える主な不安とは?

実際に、終活を考えるおひとりさまからは、次のような不安の声が寄せられます。
病気・介護の時、誰に頼ればいい?
「もし自分が突然倒れたら?」「認知症になったら?」
施設入所の判断や医療に関する意思決定を誰がしてくれるのか不安という声が多いです。
家族が近くにいない、あるいは頼れない場合、日常のちょっとしたことから大きな決断まで、すべて自分ひとりで抱えなければならないように感じ、不安が募ります。
最期の時、誰が見送ってくれる?
「亡くなったあと、誰にも気づかれずにひっそりと・・・」という状況は、誰しも避けたいものです。
しかし、現実として、おひとりさまの孤独死が社会問題にもなっています。
また、火葬や納骨などの手続きは誰が行ってくれるのか、遺体の引き取りは誰がするのかといった点も、大きな心配事となります。
財産や物の整理はどうなる?
預金や不動産などの財産だけでなく、家の中の物、写真、思い出の品、そしてペットの行き先など・・・自分の死後、それらがどのように扱われるかを想像すると、不安が尽きません。
「面倒をかけたくない」と思いながらも、何をどう準備しておけばいいのか分からず、手をつけられないまま月日が流れてしまう方も多くいらっしゃいます。
判断力が低下した時はどうなる?
今は元気でも、将来、認知症や脳疾患などで判断力が落ちてしまった時、自分の意思が伝えられなくなることもあります。
そんな時に、悪質な業者にだまされたり、周囲とのトラブルになったりするリスクも無視できません。
3. 大切なのは「行動に変える」こと

不安を感じることは、決して悪いことではありません。
むしろ、不安があるからこそ、「備える」という意識が生まれます。
ただし、漠然とした不安のまま放置してしまうと、心の負担は大きくなる一方です。
そして、いざという時に準備が間に合わなかったり、後悔を残してしまうことにもつながります。
大事なのは、不安を「行動」に変えていくことです。
まずは、ご自身の不安を言語化してみましょう。
紙に書き出して、「どんなことが気になっているのか」「その原因は何か」「今のうちにできることはあるか」と、整理するだけでも気持ちはずいぶんと楽になります。
たとえば、「介護が不安」と書いたなら、「介護サービスの種類を調べておこう」「施設の見学に行ってみよう」「任意後見制度について調べてみよう」など、小さな行動に分解できます。
4. おひとりさまにこそ勧めたい終活の4ステップ

不安を小さくするには、具体的な準備が必要です。
ここでは、おひとりさまに特におすすめしたい終活のステップを4つご紹介します。
① エンディングノートの活用
エンディングノートは、自分の希望や情報を自由に書き残すノートです。
法的効力はありませんが、「医療・介護の希望」「葬儀やお墓のこと」「知人へのメッセージ」「財産の情報」「大事にしている物や写真」など、自分の考えをまとめるのに最適です。
まずは1冊のノートから始めてみましょう。
書きながら、「自分が大切にしていること」「まだ準備できていないこと」に気づくきっかけにもなります。
② 任意後見契約・財産管理契約
将来、判断能力が衰えてしまった時のために、信頼できる人に大切な手続きなどをお願いしておく制度をご紹介します。
- 任意後見契約:元気なうちに将来の後見人を指定できる。
- 財産管理契約:病気や高齢によって財産の管理を任せたい時に活用する。
- 死後事務委任契約:亡くなった後の各種手続きなどをお願いする。
行政書士や司法書士などの専門家に相談することで、自分に合った契約内容を組み立てることができます。
③ 遺言書の作成
おひとりさまにとって「遺言書」は特に重要です。
誰に何を遺すか明確にしておかないと、遺産は法定相続人がいない場合、最終的には国のものになってしまいます。
また、家族や知人との間にトラブルが起きないよう、きちんとした形式で作成することが大切です。
自筆で書く方法もありますが、公正証書遺言で作成すれば、より安全・確実です。
④ 信頼できる専門家とのつながり
自分ひとりでは難しいことも、専門家の力を借りればスムーズに進みます。
行政書士、司法書士、社会福祉士、ファイナンシャルプランナー、地域包括支援センターなど、相談先は多岐にわたります。
大切なのは、「いざという時に相談できる相手」がいること。
少しでも不安を感じたら、無料相談などを活用して、まずは一歩踏み出してみましょう。
【まとめ】一歩踏み出せば不安は少しずつ小さくなる

終活とは、「自分の死を準備すること」ではありません。
むしろ、「これからの時間をどう過ごすか」「自分らしく生きるための土台をつくること」と言えるでしょう。
特におひとりさまにとっては、自分の意思をしっかり形にしておくことが、何よりの安心につながります。
不安を放置せず、具体的な準備に変えていくことで、見える景色はきっと変わってきます。
- エンディングノートを1ページだけ書いてみる。
- 近くの行政書士に話を聞いてみる。
- 地域の終活セミナーに参加してみる。
そんな小さな一歩が大切です。
不安があるのは自然なこと。
だからこそ、「ひとりでも大丈夫」と思える人生の設計を、今から少しずつ始めてみませんか?
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