遺言書が無効になる!?その理由と対策をわかりやすく解説

「せっかく遺言書を作ったのに、無効になってしまった…」

そんなことが実際に起きてしまうのをご存じですか?

遺言書は、ご自身の想いを形にして残せる大切な書類です。

そのため、書き方や手続きに不備があると「これは無効!」とされてしまうことがあります。

この記事では、「遺言書が無効になる理由」と「無効を防ぐための対策」について解説します。

遺言書が無効になる主な理由

せっかく時間をかけて作った遺言書でも、一定の条件を満たしていないと「無効」と判断されてしまうことがあります。

「無効」とは、遺言書に法的な効力が認められない状態です。

無効になってしまうと、想いが家族に届かないどころか、相続をめぐる争いの火種になってしまう可能性もあります。

遺言書を作る時には、まず「無効にならないか」を意識することがとても大切です。

法的要件を満たしていない

遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれに法的な形式要件が定められています。

たとえば、「自筆証書遺言」は最も手軽に作れる形式ですが、形式ミスによる無効のリスクも高くなります。

自筆証書遺言の場合、「全文を本人が自筆で書くこと」「日付が明記されていること」「署名と押印があること」が最低限の条件です。

これらのどれか1つでも欠けていれば、遺言としての効力は認められません。

たとえば、日付を「令和○年○月吉日」と記してしまった場合は、日付が特定できないため無効とされる可能性があります。

遺言書は「内容さえ書いてあればいい」というものではなく、きちんと形式を守らなければならない文書です。

せっかくの備えを台無しにしないためにも、形式的なルールはしっかり押さえておく必要があります。

遺言能力がなかったと判断される

遺言書は「本人の自由な意思」によって書かれるものでなければなりません。

そのため、遺言を作成した時点で、本人がしっかりと物事を判断できる状態であること、つまり「遺言能力」があることが前提になります。

この能力が欠けていると判断された場合、どんなに内容が整っていても、その遺言書は無効とされてしまいます。

たとえば、認知症がかなり進行していて、自分の財産の内容や相続人との関係を正しく認識できていない場合、その遺言は「本人の意思で作られたものとはいえない」とされることがあります。

高齢でなくても、精神的な疾患や一時的な錯乱状態などにより判断能力が低下していたケースも同様です。

遺言能力の有無は専門的な判断が求められるため、作成時の記録や証拠が非常に重要になります。

医師の診断書や録画映像などを残しておくと、遺言の有効性を証明する助けになります。

内容が不明確・矛盾がある

遺言書に書かれている内容が「誰に」「何を」相続させたいのかを特定できない場合や矛盾が含まれている場合は、無効とされることがあります。

内容があいまいだと、相続人が遺言をどのように解釈すべきか分からず、実際の手続きがスムーズに進まなくなるためです。

たとえば、「長男に不動産を相続させる」と書かれていても、その不動産がどの物件を指しているのかが不明な場合、トラブルになる恐れがあります。

また、「長女に○○の預金を遺す」と記されている一方で、「すべての財産は次男に相続させる」と別の箇所に書かれていた場合は、内容が矛盾しているとして無効扱いされる可能性もあります。

遺言書は、作成者の意思を「誰にでも正しく伝わる形」で明確に記すことがとても重要です。

専門家のアドバイスを受けながら、読み手に誤解されない表現で作成することが、無効リスクを避けるための大切なポイントになります。

遺言書が無効にならないための対策

遺言書が無効になると、せっかくの思いや希望が家族に伝わりません。

相続手続きが複雑化し、残された家族の間に争いが生まれるリスクも高まります。

そうしたトラブルを防ぐためには、遺言書作成の段階でしっかりと対策を講じておくことが重要です。

自筆証書遺言は保管制度を利用する

自筆証書遺言は、自分ひとりで手軽に作成できる点が大きなメリットです。

しかし、形式の不備によって無効と判断されるリスクが非常に高くなっています。

形式不備による無効を防ぐために、2020年7月から始まったのが「法務局による自筆証書遺言の保管制度」です。

この制度を利用すれば、法務局の職員が形式要件を確認してくれるため、明らかな不備を事前に防げます。

遺言書の原本は厳重に保管され、本人が亡くなった後に法定相続人が閲覧・取得できるようになっており、紛失や改ざんのリスクも大幅に低下します。

通常、自筆証書遺言を使うには家庭裁判所での「検認」を経なければなりませんが、法務局で保管された遺言書であれば不要です。

自筆証書遺言を作成したい方には、保管制度の利用を強くおすすめします。

形式不備による無効を防ぐだけでなく、スムーズな相続手続きにもつながります。

公正証書遺言を活用する

遺言書の中で、最も確実性が高いのが「公正証書遺言」です。

公証人という法律の専門家が作成に関与し、公証役場で正式に作成・保管されます。

作成には手間や費用がかかるものの、無効とされるリスクが非常に低く、多くの人が利用しています。

公正証書遺言を作成するには、本人が公証役場に出向くか、公証人に自宅や病院などに出張してもらいます。

作成時には、本人の意思が明確かどうかが丁寧に確認され、2人の証人が立ち会うことが法律で義務付けられています。

そのため、作成後に「判断能力がなかったのでは?」と疑われにくく、信頼性の高い遺言書として効力を発揮します。

また、公正証書遺言は原本が公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。

家庭裁判所の「検認」が不要な点も大きなメリットで、死後の手続きがスムーズに進められます。

確実に意思を残したい方や相続をめぐるトラブルを避けたい方には、公正証書遺言の活用を強くおすすめします。

作成時の判断能力を証明しておく

遺言書の有効性が争われるケースで非常に多いのが、「本人に遺言能力がなかったのではないか」という疑念です。

とくに高齢の方が遺言を作成する場合、認知症の進行や体調の影響によって判断能力が疑われることが少なくありません。

そこで、遺言を作成した時に「しっかり判断できる状態だった」という証拠を残しておくことが、とても重要になります。

まず、有効な方法として挙げられるのが、医師の診断書を取得することです。

遺言書の作成日に、本人が正常な判断力を持っていたことを示す診断書を残しておけば、後に争われた際の強力な証拠となります。

また、遺言書作成時の様子を録画しておくことも有効です。

映像には、本人がしっかりと内容を理解し、自分の意思で署名している様子が記録されるため、後に「無理やり書かされた」「本人の意思ではなかった」などと争われにくくなります。

弁護士や行政書士など専門家の立ち会いのもとで録画すれば、さらに信ぴょう性が増します。

これらの証拠を残しておくことで、将来的なトラブルを防ぎ、遺言書の有効性をしっかりと確保することができます。

法律の専門家に相談する

遺言書を作る時には、法律の専門家に相談することをおすすめします。

具体的には、行政書士・弁護士・司法書士・税理士など、相続や遺言の実務に詳しい専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。

専門家に相談することで、法律上のミスを防ぐことができるだけでなく、あなたの意思を正しく遺言書に反映させることができます。

たとえば、自分では明確に書いたつもりでも、第三者にとっては意味がわかりにくかったり、解釈に迷うような表現になっていることがあります。

また、法律の条文に従って正確に記載されていないと、形式不備として無効になる可能性もあります。

専門家は、リスク要因を事前にチェックし、より適切な表現や構成に修正するサポートをしてくれます。

さらに、家族構成や財産の内容によっては、単純な遺言では対応できない複雑なケースもあります。

たとえば、再婚していて前妻との子どもがいる場合や内縁関係のパートナーがいる場合などでは、専門的な知識が必要です。

専門家への相談は、費用がかかるものの、それ以上に「確実に意思を実現できる」安心感が得られます。

将来のトラブルを未然に防ぎ、大切な人に想いを正しく届けるためにも、ぜひ活用してみてください。

【まとめ】遺言書作成は専門家へ!

遺言書は、人生の終わりに「自分の想いを残す」大切な手段です。

しかし、内容や形式に不備があると無効になり、あなたの願いが叶わないばかりか、かえって家族に負担や争いを残すことになりかねません。

遺言書が無効になる原因は、形式的なミス・判断能力の有無・内容のあいまいさなど、さまざまな要因が関係しています。

そのため、遺言書を作る時には、無効リスクを減らすための工夫や準備がとても大切です。

相続をめぐるトラブルは、一度起こると解決に長い時間と費用がかかります。

遺言書の作成は「早めに」「確実に」進めておくことが重要です。

迷った時には、行政書士や弁護士などの専門家に相談しながら、一緒に「思いのこもった遺言書」を形にしていきましょう。

当事務所では、遺言書の作成をトータルでサポートします。

詳しくはコチラをご確認ください。