高齢者が猫と暮らすメリットとデメリット:遺言書や認知症対策が必須

子どもが独立して、家が静かになった。

退職して、ふと気づくと一日が長く感じる。

人生の後半にさしかかると、これまでとは違う時間の流れを感じる方も多いのではないでしょうか。

そんな中で、「猫と暮らしてみたい」「もう一度猫を迎えたい」と考える高齢の方が増えています。

ふわふわの毛並み、マイペースな性格、そっとそばにいてくれる存在。

猫との暮らしは、確かに心を豊かにしてくれます。

一方で、「もし自分が先に亡くなったら?」「施設に入る時、この子はどうなるのだろう?」という不安も、現実問題として存在します。

この記事では、

  • 高齢者が猫と暮らすメリット
  • 気をつけたいデメリット・リスク
  • 万一のときに猫を困らせないための「お金と仕組みの整え方」

について、行政書士の立場からわかりやすくお伝えします。

高齢者が猫と暮らすメリット

心の面でのメリット

まず何より大きいのが、心の支えになるという点です。

  • 一人暮らしの寂しさが和らぐ
  • 「おはよう」「行ってきます」「ただいま」と、自然と会話が生まれる
  • 何気ないしぐさや寝顔に癒され、気持ちが落ち着く

「この子のためにも元気でいよう」「ちゃんとごはんをあげなきゃ」といった役割や生きがいが生まれることも大きなポイントです。

心がふっと軽くなる瞬間が増えることで、気分の落ち込みの予防にもつながります。

身体・健康面でのメリット

猫のお世話は、「ちょうど良い動き」を日常に取り入れてくれます。

  • ごはんを用意する、食器を洗う
  • トイレの掃除をする
  • おもちゃを使って一緒に遊ぶ

こうした動きは、無理のない範囲での軽い運動になります。

また、「朝ごはんの時間」「夜の遊び時間」が決まることで、生活リズムが整いやすくなるというメリットもあります。

昼夜逆転しがちだった生活が、猫のおかげで朝型に戻ったというお話も珍しくありません。

社会とのつながりが生まれるメリット

猫と暮らすことで、人とのつながりが増えることもあります。

  • かかりつけの動物病院に通う
  • ペットショップやホームセンターに猫砂やフードを買いに行く
  • ご近所さんや家族と「うちの猫がね」と話題が増える

また、スマートフォンを使って猫の写真を撮り、家族に送ったり、SNSに投稿したりすることで、新しい交流のきっかけにもなります。

高齢者が猫と暮らすデメリット・リスク

メリットがたくさんある一方で、見過ごしてはいけない現実もあります。

体調不良や入院時の「お世話問題」

年齢を重ねると、思わぬ病気やケガで急に入院することもあります。

  • 救急搬送され、そのまま入院になった
  • 「1週間くらい」と言われていた入院が、検査の結果、長期になってしまった

こうしたとき、家に残された猫のお世話を誰がするのかが問題になります。

近くに家族がいてすぐに駆けつけてくれれば良いのですが、「子どもは遠方」「頼れる人がいない」というケースも少なくありません。

身体機能の低下によるリスク

年齢とともに足腰が弱くなると、次のようなリスクも出てきます。

  • 足元に猫がいることに気づかず、つまずいて転倒する
  • トイレの掃除や高い場所の掃除が負担になり、衛生状態が悪くなる

転倒・骨折は、高齢者にとって大きな事故です。

猫との暮らし方や家具の配置を工夫しないと、思わぬケガにつながることがあります。

経済的な負担

猫と暮らすには、継続的なお金も必要です。

  • フードや猫砂などの消耗費
  • ワクチン・健康診断の費用
  • 病気やケガをしたときの医療費

特に高齢になると、猫も病気が増え、医療費が大きな負担になることがあります。

年金収入だけになったときの生活を考えると、「この子と最期まで生きていくために、どのくらいのお金がかかるのか」を一度イメージしておくことが大切です。

周囲とのトラブルリスク

住まいの状況によっては、トラブルの火種になることもあります。

  • 賃貸住宅で「ペット不可」「1匹まで」などの規約
  • 鳴き声やニオイをめぐる近隣トラブル
  • 災害が起きたとき、避難所に猫を連れていけないケース

「かわいいから」「情が移ってしまったから」といって規約を無視すると、飼い主さん自身が住む場所を失ってしまうおそれもあります。

「もしものとき」愛猫はどうなる?

ここからは、実際に起こりやすい場面をご紹介します。

飼い主が先に亡くなった場合

一人暮らしで猫を飼っていた親御さんが、突然の病気や事故で亡くなられてしまうケースもあります。

残された猫について、遺族の方がこう悩まれることがあります。

  • 自分の家にはもう先住猫がいて、相性が心配
  • 家族に猫アレルギーの人がいる
  • そもそもペット不可の住宅に住んでいる

その結果、親族の誰も引き取れず、保護団体や保健所に相談せざるを得なくなることもあります。

入院等で自宅に戻れなくなった場合

  • 転倒して骨折 → リハビリのため長期入院
  • 帰宅ではなく、介護施設への入所が必要になった

こうした流れは、決して珍しいものではありません。

しかし、ほとんどの病院や施設はペット同伴不可です。

「退院したらまた一緒に暮らせる」と思っていたのに、現実には猫だけが家に取り残されることになってしまう場合があります。

認知症で世話が行き届かなくなる場合

認知症の進行により、次のような状態になることもあります。

  • ごはんを何度もあげてしまう、逆にあげ忘れてしまう
  • トイレの掃除や水の交換ができなくなる
  • 病気のサインに気づけない

本人には「猫を大切にしているつもり」でも、結果として猫が適切なケアを受けられない状況になってしまうリスクがあります。

それでも猫と暮らしたい人が「必ず整えておきたい備え」

ここからは、行政書士として特にお伝えしたい「備え」のお話です。

大きく分けると、お金・人・仕組みの3つが大切です。

① お金の備え :猫のための費用をどう確保するか

まずは、猫がこれから生きていくための費用の確保です。

  • フードや猫砂などの消耗費
  • ワクチンや定期検診の費用
  • 病気・ケガの治療費

猫の年齢や健康状態にもよりますが、「自分がいなくなったあと、この子が数年暮らしていけるだけのお金」を目安に考えるとよいでしょう。

そのうえで、例えば次のような方法があります。

  • 遺言書で「猫の世話を引き受けてくれる人」にお金を遺す
  • 「猫の飼育費」として使ってもらうよう、意思を残しておく

いずれの場合も、金額の目安や使い方を具体的に決めておくことが大切です。

② 人の備え : 猫を託せる「人」を決めておく

お金の次に大事なのは、「猫を託せる人」です。

  • 家族・親族の中で、引き受けてくれる人はいるか
  • 友人・知人で、猫好き・ペット可住宅に住んでいる人はいるか
  • 場合によっては、保護団体やシニアとペットのマッチング団体などの力を借りられないか

「何かあったらよろしくね」と口頭でお願いしているだけでは、いざという時に行き違いが起こることがあります。

できれば、

  • 本人
  • 猫を引き受ける人
  • 必要に応じて専門家(行政書士・弁護士など)

が話し合い、書面にしておくことをおすすめします。

③ 仕組みの備え :法的な「約束」をつくる

最後に、「仕組み」としての備えです。

ここは行政書士が特にお手伝いできる部分になります。

【遺言書でできること】

遺言書には、次のようなことを具体的に書いておくことができます。

  • 猫の引き取り先(誰に引き取ってもらうか)
  • 「お礼(飼育費)」として、いくら遺すか
  • 猫の飼育に関する希望(例:できれば今のフードを続けてほしい 等)

これにより、残された家族が迷わずに行動できるようになります。

【見守り契約・任意後見契約・死後事務委任契約など】

将来、判断力が低下したときや、亡くなった後の事務手続きについて、あらかじめ信頼できる人に任せておく契約もあります。

  • 見守り契約
    現時点では元気だけれど、定期的な見守りや相談相手になってもらう契約
    → 体調の変化や生活の変化に気づき、猫のことも一緒に考えてもらえる体制を作れます。
  • 任意後見契約
    判断能力が衰えたときに、生活や財産管理をサポートしてもらう仕組み
    → 猫の費用の支払い・動物病院への受診手配なども、内容によっては任せることが可能です。
  • 死後事務委任契約
    葬儀・役所への届出・遺品整理など、亡くなった後の事務手続きを任せる契約
    → その中に「猫の引き取り手配」を組み込むことができます。

また、場合によっては、ペットのための信託といった仕組みを使うことも考えられます。

詳しい内容や向き不向きは人によって異なりますので、個別にご相談いただくのが安心です。

高齢の親御さんが猫を飼っている/飼いたがっているご家族へ

「親が一人暮らしで猫を飼い始めた」
「猫を飼いたいと言っているが、将来が心配」

そんなご家族のご相談も多くあります。

心配な点は、例えば次のようなところではないでしょうか。

  • 親が倒れたとき、猫はどうなるのか
  • 自分たち(子ども世代)が最終的に引き取れるのか
  • 費用の負担はどうするのか

こうした不安は、親子で早めに話し合っておくことが大切です。

  • 誰が猫を引き取れる可能性があるか
  • 引き取る場合、どの程度までなら費用を負担できるか
  • 施設入所などのタイミングをどう考えるか

高齢の親御さんと猫は、一緒に歳を重ねていきます。

「親の老い」と「猫の老い」が同時進行で進むことを前提に、無理のない形を一緒に探していくことが大切です。

行政書士としてお手伝いできること

猫との暮らしを続けながら、将来の不安を少しでも軽くするために、わたしたち行政書士がお手伝いできることは、例えば次のようなものです。

  • 猫の行き先や飼育費のことも含めた遺言書の作成サポート
  • 見守り契約・任意後見契約・死後事務委任契約など、将来に備えるための各種契約のご相談・書類作成
  • 「うちの猫の場合、どんな備えが必要?」といった個別相談

「具体的に何から始めたらいいかわからない」「こういうケースでも備えは必要?」など、頭の中を一度整理するだけでも、心がぐっと軽くなることがあります。

【まとめ 】猫との暮らしは素晴らしい。だからこそ「備え」が必須

高齢者が猫と暮らすことには、

  • 心の支えになる
  • 生活リズムが整いやすくなる
  • 社会とのつながりが生まれる

といった、たくさんのメリットがあります。

一方で、

  • 飼い主さんが先に亡くなる
  • 病気やケガで長期入院する
  • 施設入所や認知症などで、猫の世話が難しくなる

といった現実も、避けては通れません。

だからこそ、最終的にお伝えしたいのは、次の一言です。

高齢者が猫と暮らすとメリットがたくさんあるけれど、備えは必須
猫よりも飼い主さんが先に亡くなったり、入院や施設に入所することを考えて、「お金」と「仕組み」を整えておかねばならない。

この準備があるかどうかで、猫と飼い主さん、そしてご家族みんなの安心感は大きく変わります。

「今のうちに、うちの猫の将来について考えておきたい」と感じられたら、行政書士への相談も、ぜひ一つの選択肢として覚えておいてください。

必要な備えは人それぞれです。
あなたと、あなたの大切な猫にとって、いちばん安心な形を一緒に考えていきましょう。

当事務所では、猫との暮らしをサポートしています。

詳しくはコチラのホームページをごらんください。